年齢を重ねると、「なんとなく疲れやすい」「食が細くなってきた」と感じることが増えます。その変化は、体に必要な栄養が十分に取れていないサインのひとつである場合も。高齢者は、食べる量が少なくなったり噛む力や消化の力が低下しやすいため、気づかないうちに栄養が不足しがちです。体のために良かれと思った食事制限が、逆にバランスを崩してしまうこともあります。
しかし、日々の食事をほんの少し見直すだけで、体はきちんと応えてくれます。大切なのは、「今の自分の体が必要としているもの」を知ることです。
この記事では、高齢者に不足しやすい栄養素と、その補い方をわかりやすくお伝えします。無理なく続けられる習慣を取り入れ、毎日を気持ちよく過ごすためのヒントとして、ぜひお役立てください。
なぜ高齢者は栄養不足になりやすいの?

年齢を重ねるにつれ、食事量や好み、体の働きが少しずつ変わっていきます。気づかないうちに主食やたんぱく質、ビタミン類が不足しやすくなり、日常の元気に影響が出ることもあります。ここでは、その背景を落ち着いて整理し、今日から見直せる視点をお伝えします。
食事量が自然と減りやすい
年齢を重ねることで基礎代謝がゆるやかになり、強い空腹感を覚えにくくなっていきます。少量で満足しやすくなる一方、必要な栄養すべてをとり切れない日が続くこともあります。一食を抜く習慣が重なると、たんぱく質やビタミン、ミネラルが不足し、全体のバランスが崩れやすくなります。
そのようなときには、三食にこだわらず、小分けにして回数を増やす工夫が役に立ちます。ヨーグルト、豆腐、牛乳、卵、果物などを少しずつ追加するだけでも、合計するとしっかりした栄養量に近づきます。主食を極端に減らしすぎないことも、体の元気につながります。
噛む力・飲み込む力の変化
歯や歯茎の状態、唾液量、舌や喉の動きは、年齢とともに変わっていきます。その変化によって、硬い肉や生野菜を避けるようになることがあり、結果としてたんぱく質や食物繊維、ビタミンの摂取量が少なくなる場合があります。
まずは調理方法を見直してみることがおすすめです。ひき肉や魚の缶詰を活用する、根菜をやわらかく煮る、刻み野菜のスープにする、といった工夫が取り入れやすくなります。温かい料理にとろみをつけると飲み込みやすさが高まり、食卓の満足感にも広がりが出てきます。
消化吸収力が弱まることがある
胃酸の分泌や腸の働きがゆっくりになることで、同じ量を食べていても栄養の吸収が追いつかないことがあります。とくにビタミンB12など、一部の栄養素では取り込みに個人差が生まれやすい場合があります。
大切なのは、負担の少ない調理に切り替えることです。蒸す、煮るを中心にした献立、温かい汁物を添える工夫は消化を助けます。食事の最初にたんぱく質を少量とる方法も、体が受け取りやすい形につながります。さらに、水分と食物繊維の組み合わせを意識すると、穏やかなリズムづくりを支えやすくなります。
外出機会の減少で偏りやすい
外に出る機会や人と食事をする機会が減ると、買い物の頻度が下がり、同じ食品ばかりに偏りやすくなります。調理への気力がわかない日が続くと、主食だけで済ませてしまうこともあり、栄養の幅が狭くなることがあります。
そこで、手間を減らしながら栄養を補える食品をいくつか常備しておくと安心です。ツナ缶やさば缶、豆のレトルト、切り干し大根、乾燥わかめ、個包装のチーズなどが役に立ちます。週に一度の買い物でも、組み合わせ次第で食卓の彩りは変えられます。
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シニア世代の食事で特に不足しやすい栄養素と役割
高齢者の食生活では、特定の栄養素が知らないうちに不足しやすくなることがあります。ここでは、その中でもとくに意識したい栄養素と、日々の食事で取り入れやすくするためのヒントをお伝えします。「自分の場合はどうだろう」と思い浮かべながら読み進めてみてください。
たんぱく質
筋肉、肌、内臓など、体のあらゆる部分の材料になる重要な栄養素です。年齢を重ねると、筋肉が自然と減っていくため、若い頃と同じ量では足りなくなることがあります。
たとえば「朝はコーヒーだけで済ませてしまう」方の場合、お昼や夜に挽回しようと思っても、多く食べられず不足しがちです。たんぱく質は一度にたくさん摂るよりも、少しずつ毎回の食事にのせる方法が続けやすくなります。
たんぱく質が多く含まれている食品
- 卵
- ヨーグルト
- 豆腐
- 納豆
- 魚や鶏肉
目安は「主食+たんぱく源を1品」。これだけでも、体が喜ぶバランスに近づきます。
カルシウム
骨や歯を支える栄養として知られていますが、筋肉の働きや神経の伝達にも関わる大切な役割を持ちます。しかし、食事量が減ったり、乳製品を控えたりすると、とくに不足しやすくなります。
例えば「牛乳はお腹がゴロゴロして苦手」という方は少なくありません。そんなときは、下記の食品など、別のもので取り入れる工夫ができます。
カルシウムが多く含まれている食品
- 小魚
- チーズ
- 厚揚げ
- 小松菜
さらに、カルシウムはビタミンDと組み合わせることで体での利用効率が高まります。
ビタミンD
ビタミンDは、骨の健康を支えるために欠かせない栄養素で、カルシウムの吸収を助ける役割があります。しっかり摂っているつもりでも、知らないうちに不足しやすい栄養の一つです。
その理由の一つが、「日光に当たる時間の減少」です。ビタミンDは食事からだけでなく、日光を浴びることで皮膚でも作られます。しかし、外出の機会が減ったり、屋内で過ごす時間が長くなったりすると、体内で作られる量が少なくなりやすいのです。暑さや寒さで散歩を控える時期も、自然と不足しやすい状況になります。
食品では、下記のものに多く含まれており、食事からも取り入れることが可能です。
ビタミンDが多く含まれている食品
- 鮭
- いわし
- しらす
- きのこ類
「毎日外へ出るのは少し大変」という日には、朝の光が入る部屋で過ごすだけでも日光を感じやすくなります。無理なくできる範囲で、少しずつ意識してみてください。
鉄分
鉄分は、体のすみずみまで酸素を運ぶ役割を担う大切な栄養素です。女性に多い印象がありますが、年齢を重ねた男性でも不足する場合があります。食べる量が減ることで、自然と摂取が少なくなりやすい栄養のひとつです。
また、消化の変化によって吸収効率が下がることも、不足が進む背景として考えられます。体に必要な量がしっかり届かず、「最近、階段が少しつらい」「動くと息切れしやすい」といった変化に気づくことがあります。
そのため、日々の食事で意識して鉄分を含む食品を選ぶことが大切です。
鉄分が多く含まれている食品
- 赤身肉
- かつお、まぐろ
- レバー
これらの食品は、鉄分が体に取り入れられやすいとされています。
一方で、ほうれん草や豆類などの植物性食品から補う場合は、ビタミンCと一緒にとることで吸収がスムーズになりやすいという特徴があります。例えば、ほうれん草にレモンを添えるなど、小さな工夫でも違いが生まれます。
無理のない範囲で、少しずつ意識してみてください。
食物繊維
食物繊維は、腸内環境を整えるために役立つ栄養素で、毎日のすこやかなリズムを支える存在です。ただ、野菜や果物、豆類を以前より食べる機会が減ると、意識しない限り不足しやすくなります。
「体に良いと分かっていても、準備に手間がかかると続けづらい」と感じる方は少なくありません。加えて、一度にたくさん食べようとすると、お腹が張って苦しくなる場合もあり、結果的に控えてしまいがちです。
まずは、取り入れやすい方法をいくつか持っておくことが大切です。
食物繊維をうまく取り入れる方法
- 具だくさんの味噌汁を作る
- カット野菜や冷凍野菜を上手に活用する
- 雑穀米や全粒粉のパンを選ぶ
このような工夫で、自然と量を増やせます。
ほんの少しの積み重ねでも、日々の食事の流れは変わっていきます。できる範囲で少しずつ意識してみてください。
毎日の食事でどう補う?おすすめの組み合わせ

栄養素を一つずつ意識するのは大変に感じられるかもしれません。そこで、毎日の食事の中で「組み合わせ」を上手に活用すると、無理なく必要な栄養を取り入れやすくなります。ここでは、60代の体を支えるために意識したい組み合わせと、その実践方法をお伝えします。
たんぱく質は「毎食少しずつ」がポイント
たんぱく質は、まとめて大量にとるより、少しずつこまめに補うと体が利用しやすくなります。毎食「主菜をひとつ足す」イメージが続けやすい工夫です。
たんぱく質を取り入れる際の例
- 朝:ゆで卵やチーズ
- 昼:豆腐や納豆を添えた一品
- 夜:魚や鶏肉をやわらかく調理
実践している方の中には、「朝はパンにヨーグルトをプラスするだけ」といった形で気負わず取り入れているケースも見られます。
体に必要な材料をこまめに届ける意識が、毎日の動きやすさにつながっていきます。ご自身の食卓に合わせて無理なくアレンジしてみてください。
骨の健康には「カルシウム+ビタミンD」
カルシウムとビタミンDは「一緒に意識する」ことで体が利用しやすくなります。どちらか片方だけでは力を発揮しづらく、組み合わせが鍵になります。
おすすめの組み合わせ例
- 鮭+牛乳
- しらす+小松菜
- 卵+きのこ
買い物の頻度が少なくても、缶詰や乾物を活用すれば無理なく取り入れられます。小さな工夫を積み重ねるだけで、体にやさしい骨ケアに近づきます。
貧血予防には「鉄+ビタミンC」
鉄は体への吸収率に差がありますが、ビタミンCを添えることで利用されやすくなります。食卓のちょっとした彩りが、バランスの改善につながります。
食事に取り入れる場合におすすめの合わせ方
- ほうれん草のお浸しにレモンを添える
- 豆とパプリカのサラダにしてみる
- 焼き魚に大根おろしを合わせる
食材の鮮やかな色は、栄養的にもメリットがあることが多く、見た目の満足感にもつながります。味付けを大きく変えずに実践できる組み合わせです。
腸の動きを助ける食物繊維を上手に追加
体にやさしいリズムを保つためには、食物繊維を少しずつ足していく方法が続けやすくなります。準備に時間をかけなくても、工夫次第で取り入れられます。
食事に取り入れる場合におすすめの方法
- 味噌汁を具だくさんにする
- お米に雑穀を混ぜる
- 海藻や乾物を常備しておく
「野菜をしっかり食べなければ」と気負わずとも、日々の食卓に自然に馴染む工夫です。体が受け取りやすい形で、少しずつ整えていきましょう。
サプリメントを有効活用するとさらにGOOD!
毎日の食事が基本とはいえ、「どうしても必要量に届かない」「体調や時間の都合で食事が偏りやすい」という日があるのは自然なことです。その不足分を補う選択肢として、サプリメントを上手に活用する方法があります。
例えば、たんぱく質が十分にとりにくい日には、プロテイン飲料を軽食として取り入れる。外出が少なくビタミンDが不足しやすい時期には、必要に応じてビタミンの補助食品を検討してみる。そうした工夫は、無理なく取り組めるサポートになります。
ただし、サプリメントは医薬品ではありません。体調や薬との相性もあるため、通院中・持病のある方は、医師や薬剤師に相談しながら選ぶと安心です。
「頼りすぎず、うまく併用する」意識が、毎日の元気を支える一歩になります。負担の少ない方法で、ご自身のリズムに合わせて取り入れてみてください。
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今日からできるチェック習慣

栄養のことを意識しても、毎日の生活ではつい忘れてしまうことがあります。そこで、食卓を見渡すだけで実践できる、シンプルなチェック習慣をご紹介します。特別な準備は必要ありません。ご自身のペースで、できることから穏やかに続けてみてください。
食事の色数を見る
緑・赤・黄・白・黒といった、食材の色を一つの目安にする方法です。色が増えるほど、自然とさまざまな栄養が取れる傾向があります。「今日は彩りが少ないかな?」と思ったら、以下の方法を試してみてください。
- トマトを一つ添える
- ほうれん草や小松菜を少量加える
- 海藻を味噌汁に足す
このように食卓に並んだ色を眺めるだけでも、食事バランスを整えるきっかけになります。
主食・主菜・副菜をそろえる
一汁三菜を完璧にそろえる必要はありませんが、主食(ごはん)・主菜(たんぱく源)・副菜(野菜)の3要素を意識すると、自然と偏りを防ぎやすくなります。例えば、以下の組み合わせは簡単でおすすめです。
- おにぎり+味噌汁+卵焼き
- パン+ヨーグルト+サラダ
栄養を「しっかりとらなければ」と思うほど疲れてしまいます。無理なく整えることで食事のバランスを保ちながら、健康をサポートすることが可能です。
1日3食が難しくても、小分けで対策
食事量が減ったり、食が細くなったりすると、一度の食事で必要な栄養をとりきるのが難しくなってきます。その場合は、「1日3回」にこだわりすぎず、小分けにして回数を増やす工夫が有効です。例えば、以下のように柔軟に調整するとよいでしょう。
- 午前中に果物をひと口
- 午後にヨーグルトを追加
- 夜は具だくさんの汁物を中心に
このように工夫することで、生活リズムに寄り添った形で無理なく栄養を届けることができます。
まとめ
年齢を重ねることで、体に必要な栄養の量や取り込みやすさには少しずつ変化が生まれます。気づかないうちに不足しがちな栄養素が出てきても、それはごく自然なことです。大切なのは、今の自分に合った食事を知り、できる範囲で整えていく姿勢です。
食事量が減ってきたとしても、小分けにして補う、常備しやすい食品を活用するなど、負担を少なくできる工夫があります。サプリメントを選択肢に入れることも、毎日の元気を支える一助になります。体の声に耳を傾けながら、ご自身のペースで整えてみてください。
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